お笑いジェンダー論 「瀬治山 角」勁草書房
読むのに時間はかかるが、何行か読んで戻ってまた読んだり、ページごと戻ったりを繰り返す。夜ベッドの中で読み始めると目は読んでいるのに思考が停止して前に進まない。それでも文字を追うこと半分ほど読んだ。素晴らしい内容だから。
p106 入れ墨人権
「入れ墨お断り」。誰しも銭湯で見たことのあるこんな注意書きを巡って人権問題が起きている。山梨県山中湖村が村営の温泉にこの貼り紙をしたところ、皮膚の色などに基づく差別ではないかとの意見があり、法務局が人権侵害の疑いありとして調査に乗り出すこととなったのだ。 恥ずかしい話だが、このニュースにふれるまで「入れ墨お断り」が人権侵害だなどとは考えたこともなかった。「入れ墨=暴力団員」という図式が頭にあるからなのだが、この等式は確かにあまりに短絡的だ。排除されるべきは暴力行為であって、何もしていない暴力団員を排除できるかどうかな、すでに議論の余地がある。
~~~中略~~~
欧米ではファッションの一つとしなっており、日本でも若年層を中心にボディアートの一種と捉える向きもある。文字通り解釈するとこうした身体表現への抑圧になる可能性もあるのだ。
~~~中略~~~
しかし同じように民間で「外国人お断り」「身障者お断り」とやったとしたら、法に触れなくとも、マスコミなどから社会的制裁を受けるはずだ。逆に言うと入れ墨は社会的にも保護されるに値しないのだろうか。
p114婚姻届に異議あり!
みなさん!婚姻届の様式について真剣に考えたことありますか?
まず私が蹴つまずいたのは「証人欄」。証人の署名捺印の他、住所・本籍地まで書かせている。ちょっと待って。憲法二四条は「婚人は両性の合意にのみ基づいて成立」すると定めている。僕にとってこれは個人主義の原点だ。これでは天涯孤独の二人は結婚できないではないか。おまけに婚姻届の見本には、しっかり当事者の父親と思われる名前が記載されている。戸主の承認じゃあるまいし。
~~~中略~~~
証人欄の記入がないと受理されないのかと聞いてみた。回答は「ダメ」。根拠条文は民法七三九条二項で、届け出の要件として「当時者双方及び成年の証人二人以上」による「口頭または署名した書面」が必要となっている。しかし同時に七四二条二項には、この証人の条件だけがかけているときには婚姻は無効とならない、との規定もある。ちょっと食い下がってみたのだが、この規定は、これは(謝ってであれ、何であれ)いったん受理された婚姻届に関して、証人欄の不実記載を理由に無効とはされないとの趣旨だという。ただし証人に関しては、外国人でもよく、その場合は本籍地及び捺印は不要だという。
「だからか去年の夏次女の婚姻届に私が証人欄にサインできたのは。凡人の私は疑問にも思わず、証人欄にサインできる栄光を嬉しがったものだ」
~~~中略~~~
「当人の意志の確認手段として証人という制度があること自体は、ただちに違憲とは言えない」とのことだ。
しかし違和感はそれだけではない。父母の氏名や続柄・再婚の別、再婚の場合は離別・死別の年月日、さらに同居開始前の世帯の主な仕事を記入する欄がある。ちょっと待って、ともう一度キレてしまった。ある人が再婚であることを隠して結婚することは、当人同士の問題であって、第三者がとやかく言う性質の問題ではないはずだ。
「このような事は連れ子だった子が自分の出生を知らないで成人し、婚姻の時に初めて血のつながりのない父または母であったことを知ることにもなる」-→kimの意見。
~~~中略~~~
ちなみに全く同じことは離婚届に関しても言える。未成年の子どもの親権者を記入すること(戸籍法七六条)は必要としても、戸籍法施行規則五七条に従って、離別前の世帯の職業や父母の名前を書く欄があることはどうにも納得がいかない。
p123「女性に問題」なんか問題じゃない!
私はジェンダー論が専門。こんな発言をすると誤解されてしまいそうだが、それでも黙ってはいられない。そう「女性問題」なんか問題じゃないのだ。ここのところ東京高検の則定衛氏、ニュースステーションの菅沼栄一郎氏と「不倫」が原因の辞任騒ぎが相次いだ。されに最高検次長検事の「浮気で辞職しなければならないとなると、人の目がかり気にするようになり、活力を奪うことになる」との発言に対して、女性議員の有志が女性蔑視だとして法相に抗議をするという事態にまで展開してしまった。「だからか神奈川県知事の黒川氏も不倫騒動がニュースになっても再再選でまた選ばれたのだ」-→kim。
ちょっと待ってほしい。不倫は公職を終われる理由となり、性差別的な行為なのだろうか。則定氏の場合は、業者との癒着があったとすれば、これは不倫の有無とは無関係に大問題である。このことを理由に辞任というのなら当然だ。しかし不倫の方は、当事者同士の合意があるのなら、犯罪でもなんでもない。新聞のコメントでは、「検察官には高い倫理が求められる」という趣旨のものまであった。~~~
「浮気容認」発言に対する女性議員の講義は、彼女たちが性関係を結婚した夫婦の間にのみ認めるような、近代家族的規範を強く信じていることを示している。恋愛結婚と結びついた近代家族の一夫一妻制は、生を結婚の範囲内においてのみ認め、両性を拘束するという規範を伴うものであった。この立場からは、従来の家長中心の家制度で男性のみに認められていたような、婚外性交渉や売春は否定されるべきものとなる。そうした家制度的な性規範に対する、男女平等の」視点からの批判として、おの規範は確かに意味を持っていた。
しかしこれに対して、現代の性行為は、~~~中略~~~
もちろんお互いに結婚相手との関係のみに拘束し合って生きる、という生き方はこれからも尊重されなければならない。問題なのは、それを他人に向かって標準として押し付ける態度である。性的指向の多様性を認め合い、お互いがその違いを認識する、ということがない限り今回のようなリンチが繰り返される。そしてこれは同性愛者へのいわれなき差別や離婚への社会的制裁、と言ったことと全く同じ構造を持った発想であることを理解してほしいのだ。
次の半分にどんな感銘が待っているのだろうか!!